パニーニってなんだ

お盆くらいから本当についてなくって
呪われた装備でもつけてんじゃね?って
思う今日この頃。

お盆にね、実家に帰ってたんです。
有給も入れて9連休。

思う存分遊んで、おら東京さ出るだぁつって
戻ってきたのが土曜日の夜11時。

暗がりの部屋で電気のスイッチを入れる。


つかない。


もう一度押す。



つかない。


ははーん、さては、ブレーカーが落ちたな?
つってどや顔でブレーカーを見る。



・・・あれ?落ちてねぇじゃん。



ってことは、ってことは、ってことはだ。
停電だと。もう停電しかないと。
思ったわけです。

暗ぇ、暗え、つってスマホで調べたら
「停電情報!」


こっちはね、3時間以上かけて
帰ってきてるわけです。
ご存知の通り、この夏は記録的な猛暑。
猛暑ってかもう酷暑。
服は汗でびしょ濡れなわけですよ。

でも、電気もつかねぇし
給湯器もつかねぇんです。


したらもうね、何してんだと。
何してんだ東京電力と。


電気料金のお知らせに書いてる番号に電話。
なんだったら請求とかしてる暇あるなら
電気復旧させろやくらいの熱はあった。


23時半。
東京電力に電話


プルルル、プルルル・・・・



出ない。ひょっとして帰ったか?


ガチャ
「はい、こちら東京電力でございます」


もうね、出やがったなこの野郎と
停電の上待たせんのかこの野郎と


「あの!停電してるみたいなんですけど!」


「この音声は、お客様のサポートのために、録音させて頂いております・・・・」




、、、、あ、そういう感じね

つーか、今の自動音声に怒った俺の声も
録音されてるわけね・・・


つーかさ、つーかさ、
緊急なんだからすぐ繋がれよ
何で1回自動音声挟んでんだよ


「はい、東京電力でございます」

「あの!!停電してるみたいなんですけど!!!!」

もうこっちとら、幕末の維新志士並みの
正義感ですよ。正義は我にありと。


したらもうすげぇ謝ってくんのね。
東京電力さんが。
したらこっちももう、なんかごめんって
なったんですけど、今さらもうキャラを変更させる訳にも行かなくって、カカロットカカロット言ってる富士額のあいつみたいな気持ちになっちゃって

確認いたしますのでご住所をつって
言ってきたあいつにどう返せばいいかみたいな
葛藤もあったりなんかして

したらですよ、

「デンキリョウキンガシハラワレテマセン」

なんて訳のわからない言い訳をし、、



え?まじで?払ってないの俺?
俺ってか過去の俺



教えて~おじい~さん♪つって
カーテン開けたら周り普通に電気ついてた。

いや、このマンションが!

隣も普通についてた。


どこぞの王子ばりに強く出ちゃった手前
いまさらごめんって言えない!
悟空って言えない!


「それで!いつから払ってないんですか?」


いやもうお前だめだろ!
お前が聞かれるやつだろそれ!!
って強く強く思ったんですけど
サイヤ人の王子としては、電気代払ってないのを
停電のせいにしたとは言えないわけで・・
ブルマからの小遣いちょろまかしてたとは言えないわけで・・・


「えーと6月ですね。0時までに払って頂いたら今日中に復旧出来ますよ?」



ふざけやがって!
6月の振り込み用紙なんかあるかよ!


「はい、分かりました!お願いします。」


時刻は23時半。

コンビニまではすぐ行ける。
振り込み用紙も・・たぶんポストだろう。


全然余談なんですけど
うちのポスト、ダイヤルロック式なんですね。
で、これもまた全然余談なんですけど
ロック番号覚えてないんですね。
で、またまた余談なんですけど
ロック番号書いた書類は部屋のどっかに
あるんですよね。


部屋、電気つかないんですよね・・・・・


もうね、携帯のライト片手にちょっとした
インディージョーンズですよ。
んで、これが全然見つからないわけ。


23時45分

やばい、刻々と時間が・・・・
このままでは今日1日電気がつかえない。

これもまた余談なんですけど、
私、数字とか割りと語呂で覚えるんですね
確かパニーニとかだった気が・・・


23時48

一か八か!くらえ!!!
パニーニ!!!!!!!!


23時51分


パニーニじゃねえのか・・・?
そんな、まさか・・・。パニーニじゃねぇのに
パニーニの記憶がある俺の脳みそは一体・・
つーかパニーニってなんだ?


23時55分


やべぇ分からない・・。
パニーニじゃないっていうのか?
つーかパニーニってなんだ

最悪だ、最悪シャワーはいい。
スマホの充電がもうないんだ。
充電がなくなったら東京電力に電話も出来ねぇ。


お前にシャワーなし、スマホなしで
夜を越す勇気はあるか!


くらえ!!!!!
右周りパニーニーーーーーーーー!!!!!


ガチャ
開いた!


と同時に雪崩のように
落ちてくる郵便。
どんだけためてんだよ俺!

いや、そんなことはどうでもいい。
電気料金は?・・・・・あった!!





・・・・・・・・パチンッ



闇で覆われていた私の部屋に
明るい光が射し込んだ。

当たり前に電気がつくこと。
暗闇にいたからこそ、私にはその光の
有り難さが尊かった。

近ごろ、災害によって多くの地域が
被害を受けている。
その中には、断線してしまい電気が
つかなくなった家屋が山ほどあるのだろう。

トラブルではあったが、私も少しだけ彼らと
同じ感情を味わうことが出来た気がする。
私も彼らのために何か出来ないだろうか。

そんなことを考えながら
私は冷蔵庫のお茶に手を伸ばした





・・・・・くっっっっっせぇ!!!




・・・なんだこいつ?くさっ!
うんこの体操服包みホイル焼き、チーズ乗せ
汗ソース仕立てみたいな匂いがする。


コナンくんでさえ、決して入らないであろう
事件現場。だけど、この事件の現場は私の家なのだ
逃げるわけには・・・、逃げるわけには・・・



これもまた全然余談なんですけど、
実家に帰る前に、ひき肉を冷凍してたんです。


もうね、何が出来るかとか本当どうでもいいから
こいつをどうするかが先決だから。
こんなもん臭ってきたらハイジでさえ
歌の途中でえづいちゃうから。
口笛はな♪ヴォエ~つってなっちゃうから。


教えて~!おじいさん!


私はひっそりと扉を閉じた。

そう私は何も見なかった。
あんなピンクに茶色がかった異臭を放つ
謎の物体なんて知らないの。アルムの森へお帰り。


電気は復旧した。


もうすぐアルムにも冬が訪れるだろう。
極寒の冬が来て、彼が再び凍りつくまで
私はこの地には訪れない。


またあの冬が訪れるまで、
この扉は固く閉ざそう。


合言葉はもう分かってるよね


『右周りでパニーニ』