スーパーマンになったら

もしも私が超人的なパワーを
持ってたとして
人の目に触れないようにこっそりと
世の中のために活動していたとしたら
このどんよりとした空や建物は
少しはきらめいて見えるのかしら

日曜日の朝、会社へと搬送される
エスカレーターに乗りながら考えてみる

もしそうだったら
私は、今この瞬間にも
いつ助けを求めている人からの
声をキャッチしてもおかしくない

白衣と眼鏡のドリフ頭の博士から

〇〇町で事件発生、至急向かってくれ

という連絡がこのiPhone SEに入るかもしれない
したら、私はすぐに近くのパチンコ店のトイレで
コスチュームに着替えて飛んでいくだろうに


いやぁ、なまじ社会人5年目ともなってくると
成長とか、知識量とか、技術なんかよりも
いかにミスをごまかすかみたいな
要領的な部分のスキルアップが甚だしくて

今日もね、午後4時までにメールで
出さなきゃいけない書類をね
もうほんとツルッと出し忘れたことに
気づいたのが夜の7時


・・・気づかなきゃよかったなぁ、、

って思いつつも早いところ謝るに
越したことはないってのは十分に
分かってるわけです。


・・・とりあえず電話するか


「・・・もしもし?」

(お!まだいた!ラッキー!)

「遅くにすみません。今日までの書類、
 お昼頃にメールで送ったんですけど、
 届いてますでしょうか・・・?」

もうね、自然と口をついて出てました

メール送ってないじゃなくて
メール送ったけど、何らかのアクシデントで
届いていない振り

ほんと演技に幅が出すぎ


「おっかしーなぁー、
 こちらには届いてませんけどねー
 何時に送りましたかー?」

「14時半過ぎ頃だと思うんですけどー
 打ち合わせとかあって、確認できなくてー
 あれー、届いてないですかねー?」


うっ!またこの口が、、、静まりたまえ!
(※送ったけど、忙しくて電話できなかった振り)

あっれれぇー、おかしぃぞぉー?
つって二人でコナン君ばりに
謎を探求してたんですけど

うん、ほんとごめん。送ってないわ
演技が迫真に入りすぎて
なんか送った気にすらなってきたけど。

したら、向こうの人も優しくて

「うちのメールサーバとかの不具合かもしれませんので、IT部門に確認してみます!」

つって。謎が解けていくー♪つって

ありがとうございます!って言ったけど
うん、ごめん。全然ありがたくない

謎っつーか、私にとっては何ひとつ謎ではないし
正直あんまり大事にしてほしくないっつーか
解けない方がいい謎もあるからね、世の中
真実はいつも1つとは限らないじゃん
この令和の世の中

思ったよりも事が大きくなってきた
次に相手はどう来る、どう来るんだ、、
相手が確認してるわずかな時間に
残業で鈍い頭をフル回転させる

私ももう5年目。こういう時の
演技力なら劇団四季をも超える私にとって
常に相手の先を読むなんてことは・・・あ

メールを漁りながらの刹那
致命的なミスを犯したことに気づく


「送信メール残ってるだろうから
 確認して転送ください」


・・・これ言われたら終わりじゃん


あー!つって、マスクの下でひろゆき並に
顎突き出しながら慌ててグーグル先生ですよ



検索  送信メール 時間を変える方法



・・・こ、ここまで来たらやるしかねぇ
じっちゃんの名にかけて

数分後、Yahoo知恵袋で対策を発見
どうやらパソコン本体の設定時間を変えれば
行けるらしい

今は、午後7時半。
私が送ったとされる推定犯行時刻は、午後2時半。
ざっと見積って5時間の時差

パソコンの時刻をオマーンの時刻(時差5時間)に設定
私宛にメールを飛ばす
(ここら辺でラピュタの「君をのせて」が流れる)


父さん、行ってきます


「送信!」



オマーンの人、聞こえますかー!!
(サバンナ八木風)





返ってきたメール




オマーンの時刻は、19時半でした。





今日も私はスーパーマンになれそうにない。